2009年04月30日に発行された、一般向けの小説です。
本の紹介
この本は、きりこという女の子と、その飼い猫ラムセス2世を中心とした物語です。
誰が見てもぶすと言うであろう容姿をしたきりこは、両親に溺愛されてきたことで自らがぶすだという自覚がないまま成長していきます。
手に取った理由
好きなアーティストがおすすめしていたからです。
感想
結論から言うと、自分は自分なのだから他人の言うことなんて気にせず堂々と生きよう、という自己肯定感を高める話でした。
私は可愛いと自信に溢れていたきりこが、他人の言葉や態度にねじ伏せられていくところは、現代社会の闇を描いているようで苦しい場面でした。
苦しい立ち位置から脱出しようとするけど、周りが無理矢理押しとどめてきてその立ち位置にいるしかない。
そっちが行動を制限してくるのに「あいつは行動しない」と揶揄される。
そんな私の苦い経験を思い出しました。
一度レッテルを貼られたら覆すことは難しいですよね。
『自分はこうしたいけど、周りが否定してくるから怖くてできない。でも、自分のしたいことは自分にしか叶えられないのだから、周りは気にしない』
この決意に至るまでの過程がまとまっていて読みやすかったです。
きりこの見た目だけでなく、ちせという同級生の性格からも突き詰めていくところが、最終的な結論にも繋がっていて面白い流れでした。
とにかくきりこが純粋で、両親の愛情をたくさん受けて育ってきたんだなと感じました。
そして飼い猫のラムセス2世は、常にはしゃいでいるような様子で面白いです。
まるで漫才やお笑いを見ているかのようなノリと、その勢いを感じさせる軽快な文章でした。
猫だからこその着眼点には意外性と独特さがあり、〇〇のような腕、〇〇のような鼻、といった比喩表現の多彩さにも唸らされます。
そんな比喩表現も含めて、この本は人物像などの説明が丁寧で、イメージしやすかったです。
普段本を読まないという方にも読みやすい文章となっていますので、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
